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 介護施設内における転倒事故について、下級審の裁判例を紹介します。

 さいたま地裁平成30年6月27日判決(判例時報2419号56頁)です

 事例は、要介護状態にあった男性(64歳)が、短期入所生活介護サービスで入所中、個室の洗面所で、付添なしでひとりで、口腔ケア(うがい)をしていた最中に転倒し、大腿骨頸部を骨折し、その半年後に誤嚥性肺炎で死亡した。男性の遺族が介護事業所に対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求した事件です。

 さいたま地裁判決は、介護事業所の職員が口腔ケア(うがい)に付き添うなどしなかったことが安全配慮義務違反に該当するとし、転倒について責任を認めました。

 「男性は、従前から1人で口腔ケア(うがい)を行っており、具体的には、洗面所の壁に左肩をもたれかけるようにしてうがいをしており、被告の職員は、男性が上記のようにうがいをするのを見ていた。ところが、そうすると男性は、壁に左肩をもたれかけて体を支えつつ、蛇口に左手を伸ばして水を汲み、口をゆすぎ、洗面台に水を吐き出すなどの動作をすることになるから、当時の男性の身体能力や洗面所内に支えになる手すりや家具がないことも踏まえれば、被告の職員は、男性がバランスを崩すなどして転倒することを、十分具体的に予見しえたと言うべきである」「したがって、男性の転倒を防ぐ義務を負う被告としては、本件事故の当時、男性の口腔ケア(うがい)に付き添うか洗面所内に椅子を設置するなど、転倒を防止するための措置を講ずる義務を負っていたと認められる。それにもかかわらず、被告は、転倒を防止する措置を何ら講じず、その結果本件事故が発生したのであるから、被告は、本件事故の発生について、債務不履行(安全配慮義務)に基づく損害賠償義務を負うものと認められる」

 ただし、誤嚥性肺炎の要因となった認知機能の悪化について、転倒事故と因果関係があることを認めがたいとして、死亡による損害についての賠償までは認めませんでした。

 介護施設での転倒事故は少なくないが、下級審裁判所の判決で、細かく認定された事例はそう多くないので、施設での個々の利用者の状況に応じた安全対策について参考になります。

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