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コンビニエンスストア店内での転倒事故とフランチャイザーの責任

 本件は、コンビニエンスストアの店内で、客が水拭きで濡れた床に滑って転倒した事故について、コンビニチェーンのフランチャイザーの不法行為責任を認めた事例である。(大阪高等裁判所平成13年7月31日判決)

  • 判例時報1764号64ページ
  • 確定

事件の概要

X:原告・控訴人 (消費者)
Y:被告・被控訴人(コンビニチェーンのフランチャイザー)
A:事故が起きたコンビニエンスストアの経営者(コンビニチェーンのフランチャイジー)

 Yコンビニチェーン加盟のAの経営する店舗で、X(22歳の女性)が昼前に両手にパンと牛乳を持ってレジに向かう途中、床がモップでの水拭き後、乾拭きがされておらず濡れていたために、足を滑らし転倒し、その際に陳列棚の端で左腕の肘から上腕にかけて、一部筋組織に達する左上腕部ざめつそう挫滅創を受けた。XがAではなくYに対して損害賠償を請求し、Yはこれを争った。

 第一審判決(大阪地判平成12年10月31日)は、事故当時床が濡れて滑りやすくなっていたことは否定できないが、その程度も手で触れてようやく判明する程度であって、床材メーカーの指導に従ったメンテナンスが行われており、床材も湿潤時に特に滑りやすい材質が用いられていたわけではない。Xの履いていた靴の靴底が合成樹脂で長期間使用のため靴底がすり減って滑りやすくなっており、本件事故はいったんバランスを崩したところ、パンと牛乳を持って両手がふさがった状態であったため、バランスを立て直すことも転倒の衝撃を少なくすることもできないまま転倒したもので、自招事故であるとして、Xの請求を棄却した。そこでXが控訴した。

理由

1 本件事故の原因

 事故当時、店舗の水拭きにより床が濡れて滑りやすくなっていたが、目で見ただけでは分からず、手で触れて分かる程度の濡れ方であった。そのため、Xは床面の湿潤に気付かず通常の速度で歩いていたところ、不意に足を滑らせて転倒したのであり、床が濡れていたこと、ひいては本件店舗の水拭きが本件事故発生の原因になっているということができる。本件事故は通常起こりえない状況で起こったものであるとはいえない。

2 店舗側の注意義務

 本件のような店舗は、「不特定多数の者を呼び寄せて社会的接触に入った当事者間の信義則上の義務として、不特定多数の者の通常有り得べき服装、履物、行動等、例えば靴底が減っていたり、急いで足早に買い物をするなどは当然の前提として、その安全を図る義務があるというべきである」。Aは、顧客に対する信義則に基づく安全管理上の義務として、水拭きをした後に乾拭きをするなど、床が滑らないような状態を保つ義務を負っていたのに、これを尽くしておらず不法行為責任を負う。

 しかし、AとYは別法人であり、乾拭きをする等の義務を負うのはAであり、Yがこの義務の違反により不法行為責任を当然に負うことはない。

3 安全指導・監督義務

 本件床材は、Y全店における統一規格の特注品であり、モップと水切りもYから統一的に支給された製品である。Yはフランチャイザーとして、フランチャイジーに「Y」の商号を与えて、継続的に経営指導、技術援助をしていることから、Yは、フランチャイジーまたはフランチャイジーを通してその従業員に対し、顧客の安全確保のために、モップによる水拭き後、乾拭きをするなど、顧客が滑って転んだりすることのないように床の状態を保つよう指導すべき義務がある。Yはこの義務を尽くしておらず、Xに対して不法行為責任を負う(なお、Yは、Xの主張する使用者責任も負うものと解される)。

4 損害

 治療費や通院交通費のほか傷害慰謝料として130万円、後遺障害慰謝料として70万円が相当である。しかし、逸失利益については、実際に減収はなく、また、将来にわたって減収が生じるともいえなので、逸失利益の賠償は認められない。

5 過失相殺

 Xも、合成樹脂製で長期間の使用により靴底が減って滑りやすくなっていた靴を履いていたこと、パンと牛乳を持って両手がふさがっていた状態であったことなどを考慮し、5割の過失相殺をするのが相当である。

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